Summer Case 2006

今年から始まったスペインのロック・ミュージック・フェスティバル“SUMMER CASE”。マドリッドとバルセロナで同時開催され、ラインナップを入れ替えて7月14日から15日にかけて2日間行われた。私が参加したバルセロナの会場は、バルセロナ南にある港に面した場所にあった。建設されたばかりと言う近代的な建物のそばにステージが4つ用意され、メインステージである TERMINAL E からは海も眺めることができる、見晴らしの良い立地。会場内は、イギリスのフェスティバルに比べるとこじんまりとした印象を受けた。会場内の設備も乏しく、食べ物とドリンクを売っている場所が4箇所だけ設置されていて、売っているものは何処でも同じだったのが残念だった。しかし、初開催ということもあって、客入りが少なかったように思えたが、その分リラックスした雰囲気で、どのステージでも見やすかった点は良かったと思う。

このフェスティバルの一番の特徴は、開始時間。最初のバンドが午後6時45分に始まり、最後のバンドは午前5時頃始まるという、夜から朝まで続くフェスティバルという点だ。暑いスペインで、日中にバンドを見るというのに無理があるので、こういう形式になったのかもしれない。夕方から次の日の朝まで、海から吹く風に当たりながら朝まで音楽を聴き続けるというのは、他のフェスティバルとは違った雰囲気を味わうことが出来た。

DIRTY PRETTY THINGS

初日の14日、時間が大幅に遅れ7時過ぎに開場。 DIRTY PRETTY THINGS を見るため、会場内の中心にあるステージ、TERMINAL Oへ向かう。元 THE LIVERTINES のカール・バラット率いるこの4ピースバンドは、同じく THE LIBERTINES からドラマーのゲイリー・パウエル、ピート・ドハティーがバンドを抜けた後、ギターを担当していたアンソニー・ロッソマンドに、元 THE COOPER TEMPLE CLAUSE のディズ・ハモンドが加わって、2005年に結成された。THE LIBERTINES 人気を引き継いで、本国UKでもデヴューシングル「BANG BANG YOU’RE DEAD」がヒットしているが、こちらスペインでは人気の程はまだまだらしい。曲は THE LIBERTINES の頃に比べると、より正統派ロックといった感じ。演奏が始まった頃は、前の方にいる客のほとんどがイギリス人で、客入りも少なかった。

しかし次第に人が集まってきて、THE LIBERTINES の曲である「DEATH ON THE STAIRS」を演奏すると、待ってましたとばかりに歓声があがった。そしてシングル曲でも観客を盛り上げ、最後も THE LIBERTINES からの曲「I GET ALONG」で締めくくったライヴとなった。

ADAM GREEN

続く TERMINAL O でのライヴは、NY 出身のアーティスト、アダム・グリーン。MOLDY PEACHES のメンバーとしてデヴューしたが、活動を停止してソロ活動を始め、シンガー・ソングライターとしての才能を発揮。最近では、今年2月に MORDY PECHES 時代からの友達で、以前からツアーのサポートをつとめていた THE STROKES と共に UK ツアーを行っている。その曲作りのセンスには磨きがかかり、渋い声でフォーキーなロックを披露。その渋さに、リズムのずれたスロウなダンスが加わって、独特のアダム・ワールドが会場内に広がっていく。聞いていてほんわかした気分になる曲はもちろん、その天然のキャラクターとユーモアで会場を盛り上げ、最後には「FRIEND OF MINE」をスペイン語で歌い、スペイン人の女の子たちの心を鷲づかみにしていた。

BELLE AND SEBASTIAN

午後10時、メインステージである TERMINAL E に移動。人の波が全てこの開場に向かっていて、この日一番の客入りではないかと思われた。スコットランド、グラスゴーで96年に結成された大所帯バンド。心地よい美しいメロディーと、楽しいリズムは、外で聞いていると特に気持ちが良い。途中、ヴォーカルのスチュワート・マードックが会場から女の子達をステージに上げて、一緒に踊ったり、彼自ら観客側に降りて行って踊ったり、観客はもちろんのこと、メンバー達もこのフェスティバルを楽しんでいるといったとても良いパフォーマンスだった。

SIGUR ROS

テントステージである TERMINAL S に移動。彼らのパフォーマンスを見たことが無かったが、昔レディオヘッドのサポートとして来日した時の記事を読んだことがあるのと、アイスランド出身ということから、きっと他のバンドとは一味違った音楽を演奏するのだろうと予想していた。彼らの音楽で特徴的なのはまず、ギターをヴァイオリンの弦で演奏する点である。その音はとても幻想的で、それにヴォーカル Jonsi Birgisson の透きとおった声も加わり、独特の世界を醸し出していた。観客は、他のアーティストを見ている時とは違って、ただただ彼らの音楽に聞き入り、浸っているといったライヴだった。

THE CONCRETES

2日目、7時半頃会場に到着。45分に開始予定のTHE CONCRETES を観るため、TERMINAL S へ。スウェーデン、ストックホルム出身のこのバンドは、ホーンやオルガン、ピアノなどを使った爽やかポップ音楽を作り出している。UK で人気のある "ほんわかバンド" THE MAGIC NUMBERS と曲をコラボレーションしたこともある。しかし、リード・ヴォーカル担当だった Victoria Berman が、このフェスティバル前にバンドを離れ、事実上バンドは解散することになってしまった。この日は、ヴォーカルも担当していたドラムの Lisa Milberg が代わりにリード・ヴォーカルを務め、他のドラマーを迎えてライヴを行った。彼らのライヴをロンドンで何度か見たことがあるが、個性的な雰囲気と、歌い方で人気のあったビクトリアがバンドの中心であったが故に、この日のパフォーマンスはいつもとは全く違って、何か物足りなさを感じてしまったのは、残念だった。

ビクトリアは他のバンドに参加し、残りのメンバーは名前を変えて、バンド活動を続けていくらしいので、今後の彼らの動向をチェックして行きたい。

 

PRIMAL SCREAM

このフェスティバル前にアクシデントがあり、顔にアザを作って現われたボビー・ギレスビー。彼の機嫌が、もの凄く悪いだとか心配される中、登場した彼はご機嫌な様子。先日のバーミンガムでのライヴを上回る出来で、ボビー自身も観客の中に飛び込んで、もみくちゃにされながら歌ったり、柵を綱渡りのように歩いたりと、ライヴを楽しんでいる様子だった。そうなると、もちろん観客もそれに答えて、大盛り上がりとなったライヴだった。

RAZORLIGHT

2002年にロンドンで結成された、4ピースバンド。今や UK で最も人気のあるバンドの一つと言えるほどにまで成長した彼ら。7月にはセカンド・アルバム「RAZORLIGHT」をリリースし、全英アルバム・チャートで見事1位を獲得した。そのスタイリッシュな外見と、シンプルで疾走感溢れるリズム、そして耳に残るメロディが彼らの特徴である。この日も、エモーショナルなジョニーのヴォーカルを始め、若さと躍動感のあるパフォーマンスでファンを魅了し、お馴染みのナンバーで観客を沸かせ、人気の曲「Golden Touch」や「Somewhere Else」などでは観客全体で大合唱となった。8月には V フェスティバルに参加し、10月から11月にかけて、UK ツアーを行う彼らのライヴ、一度チェックして欲しい。

 

Written by Noriko Hatanaka

関連リンク

Summer Case Official :

http://www.summercase.com