ロンドン最大の駅、King's Cross St. Pancras の裏手に、大規模な2つのクラブがある。レンガの壁に、石のフロア、ソフトレザーのソファーが置かれた幻想的な匂いを漂わす
The Cross と、大倉庫を改造し、独特な音をうならすサウンド・システムが装備された Canvas 。毎年この2つのクラブを解放して2日間の音楽イベントが行われる、TDK
CROSS CENTRAL 2006。今回私が目を付けたのは、元 Jurassic 5 の DJ であり、DJ Shadow と共に7インチ世界ツアーを成し遂げた、ブレイクビーツ・マスター
Cut Chemist (USA)、3 times DMC World Champion の A-Trak (Canada) 、Mo'wax
Records の大御所 Money Mark (USA) の3人のアーティストである。今年は Money Mark と、ヨーロッパ・ツアーを共にしてきた日本人アーティスト
Tucker も登場だ。Cut Chemist のスクラッチ映像もお見逃しなく!
スタートから約20分後、音がバリバリと割れてきた。更にプツプツと切れ始めたのだ。最初はミキサーとの接触が悪いのか、それとも何かを施すために、わざと切っているのかと思っていたが、どうやら
PA 側のミスらしい。そこで彼はすぐさま音を止め、マイクを手にした...が、そのマイクの音も出ていない。少し困った様子で、やっと音の出るマイクを見つけ、PA
に向かって指示を出し始めたのだ。"ハウスを流している訳ではないんだ。ここのボリュームを上げ、ここを落とし..."
凄くやりにくそうだった。そのやり取りは約5分ほど続き、ようやく音が出たものの途中で何度も同じ現象に陥った。ライブ中音が切れるなんて最悪だ。普通の
DJ ならば、おこって帰るかもしれない。しかし彼はプロだった。そのような状況だったにも関わらず、45分間のライブを最後までやり遂げ、彼がステージを去るときには、"One
more! One more!" という声が、しばらく鳴り止まなかった。
A-Trak (Canada)
Kieran Hebden aka Four Tet が DJ 終盤にさしかかり、会場も大盛り上がりの真っ只中、キャップを斜めに被り、やんちゃな少年のような風貌でステージに登場したのは、97'
DMC World Champion の A-Trak 。スタート直後から約20分間に渡り、太いビートにのせて、スクラッチ、ジャグリング、ルーティーン、ドラム・カッティングを盛大に繰り広げ、観客から声援を浴び続けていた。以前はヒップホップ一色でセットを組んでいた彼だったが、何だかいつもと流れが違う。ミックスに突入すると、ファイナル・カットを使い、次第にブレイク・ビーツへと変化する。ビートが速くなるに連れ、観客は更に興奮し、踊り狂う。その曲は、ブレイク・ビーツと一言では言えないような、ときにはロックなものだった。会場スタッフが、"もう終わり"
だと声を掛けてもなかなかプレイをやめない彼に、私は大満足だった。
Money Mark (USA)
先程の A-Trak のライブで時間が押し、次の Nightmares On Wax Sound System が1時間遅れて終了。1
: 45am スタートのはずだった Money Mark が始まる頃には、既に 3am をまわっていた。だらけたムードの会場だったが、アンプを片手に登場した
Money Mark を見た観客は大きな拍手、そして座り込んでいた人たちも一斉に立ち上がり始めた。今回の出演は、ヨーロッパ・ツアーの最終日。ツアー・メンバーとして、ホーム・グラウンド
LA から、ドラマーの Alfredo (現在 Beastie Boys ともプレイしている) と、日本から Tucker をサポートに迎え、
ツアー最終日の疲れを感じさせないほど、パワフルでユニークなライブが始まった。まるで打ち込みのような、力強い Alfredo のドラムに、Tucker
のキーボード、そして Money Mark のギターの音色がシンクロする。ファンクでソウルな、とても心地よいライブだった。
Electone Master "Tucker"
日本を拠点に、ギター、ベース、ドラム、キーボードなど、あらゆる楽器を使いこなし、決して真似できない存在感溢れるライブを繰り広げる。今回は
Money Mark のサポート・メンバーとして参加した彼。来月11月には、現在ロンドンで高い人気を集めているクラブ Fabric
で行われる Scratch perverts 主催イベントに登場!お見逃しなく!