ファステン・ミュージック・コンクレート

2008年6月、週末のクラブ・イベント、パーティーの数においては世界一の数にのぼるイギリス、ロンドンにて世界各地のダンス・ミュージックを追いかけてきた3人の日本人が、自分たちの経験とセンスで解釈したヨーロッパ・サウンドという、新たなテイストとスタイルのクラブ・イベント&チーム『Fasten Musique Concrete』を結成した。現在までに Anthony Collins、Luca Bacchetti、TG (Tim Green)、Ludvic Vendi、Swat Squad、Daniela Stickroth、Walter Ercolino、Burnski、Camea などヨーロッパまた世界のクラブ・シーンの最前線で活躍するアーティストたちをゲストに迎えて、ピークでは600人を超える動員を記録するなど、ロンドンの中でも一際輝きを見せている Fasten Musique Concrete を今回ご紹介する。

 

音楽と共に世界を縦横無尽に駆巡る FMC

イースト・ロンドンで Fasten Musique Concrete は産声を上げた。それは必然的だった。今の世界のダンス・ミュージック・シーンの中心はベルリンではなくロンドンではないだろうか。ベルリンも確かに良いクラブやアーティストがたくさんいるが、それはスペイン、フランス、イタリア等も同じである。一時期のミニマル・ブームの勢いが若干陰りを見せる中、テック・ハウスがヨーロッパのサウンドの中心になりつつある影響も受けて、アーティストがベルリンから離れてしまっている事もここ最近ではよく耳にする話だ。Fasten がベースとしているイギリス/ ロンドンは、新しい世代のアーティストの数は多い方ではないが、パーティーはかなりの数にのぼり、ロンドンで有名なクラブやパーティーでプレイする事が、世界の舞台へと駆け上がる階段の切符を手にする意味を持つ。

その為、週末になると世界中からアーティストが集まり、互いにトレンドの最先端を競い合う。それは音楽の内容であったりパーティーの内容であったり様々だが、ここロンドンはダンス・ミュージックを世界に発信する最も大きな都市であることは間違いない。そんなロンドンで活動を続ける Fasten は、メンバー各自が莫大なリストの中から良いと思うアーティストをパーティーにゲストとして呼び、実際に彼らのプレイを確認した上で日本に紹介する。このクオリティーチェックは、今までの日本のパーティーには無いシステムだろう。これは音楽への妥協を許さない Fasten のこだわりである。 音楽に情熱を注ぐ事の出来る3人の日本人が、東京ではなくロンドンで集まったのは偶然ではなかったのだろう。

Fasten Tokyo & Posses

2008年10月、ロンドンから活動の場を広げるべく、Fasten は新たに4人のメンバーを加えて東京での展開を開始する。ロンドンのクラブ・シーンを意識したヨーロッパ・スタイルの音楽と、クラビング・スタイルを東京のシーンと上手く融合させ、新しいクラビング・スタイルを形成を目指す為に『Fasten Tokyo』は結成された。アンダーグラウンド・クラブ、ボート・パーティー、サンデー・アフタヌーン・パーティー、ビーチ・パーティーなどと音楽だけでなく、開催場所、雰囲気をトータル・プロデュースし、また、それらのクオリティーにこだわりを持つことがポリシーである。

 

映像 : FMC @Yacht/Tokyo Bay

そのスタイルは大人の遊びなれたクラバーたちにも支持され始め、大きな注目を集めると共に日本の画一的なクラブ・シーンに一石を投じている。そして、1990年代にドイツのテクノ・シーンで生まれた音楽コミュニティーからその名を取り、あくまでも人と人のふれあいや繋がりにスポットを合わせ、 互いのアイデアやセンスを音楽という共通アイテムを持って繋げることで、もっと互いの関係を深めたいというコンセプトで生まれたラウンジ・スタイル・パーティーの『Posses』。エントランス・フリーで行なわれるこのイベントは、既に多くの新たな繋がりを生み出し、Fasten を形成するにあたって大きな役割を担っている。

 

映像 : POSSES @Ucess The Lounge

ヨーロッパの最前線に迫る日本人DJ

ジュン・アキモト。Fasten Musique Concrete を紹介する上で欠かせない、メインのレジデント DJ である。現在バルセロナの PulseWith、ロンドンの Metroline、ベルリンの Sonat といったヨーロッパ各国のレーベルとサインを交わしており、これから彼の楽曲が続々と世界へ向けてリリースされていく。本物のダンスミュージックを追いかけ、2002年にロンドンへバッグ一つで移り住んだ彼は今、復活したあのT Bar のオープニングからスタッフとして関わっており、ロンドンで最もカッティングエッジな環境に身を置いている。

 

映像 : FMC @54/London by KO

彼が大きな転機を迎えたのは2008年。2人の日本人の仲間と共に、満を持して自身のパーティー Fasten Musique Concrete をイースト・ロンドンで始動し、彼はヨーロッパのシーンの最先端を行くライジング・スター達と共演を重ねていく。彼のセンス、人柄は共演したアーティスト達からも大きく認められ、そして親交を深めていく中で、Fasten に新たなチャンスが生まれ始めている。

バルセロナへの展開

6月にバルセロナで開催される世界最大のミュージック・フェスティバル『Sonar 2009』。読者の多くはご存知であろう。3日間に渡り開催されるこのフェスには、毎年世界中から述べ10万人もの人が訪れ、町中のクラブでは連日連夜パーティーが繰り広げられる。その Sonar week と呼ばれる最終日の6/21(Sun)にバルセロナの人気クラブ Macarena Club において、Fasten はバルセロナとベルリンのテクノ系人気レーベル PulseWith、Galaktika、Trenton と合同パーティーを開催する。坂本龍一やSatoshi Tomiie のように日本人のアーティストがSonar にブッキングされることは珍しくはないことだが、パーティーそのものが進出することは異例の快挙ではないだろうか。

PulseWith のオーナーであり、2008年 Beatport のベスト・ミニマル・コンピレーションに楽曲が選ばれて大きな注目を浴びた、地元バルセロナをベースに活躍しているプロデューサー Swat Squad は、過去2回 Fasten のゲストとして登場し、Jun Akimoto と共演して以来、両者の友好関係が続いている。音楽という共通の言語を通じてお互いの才能/人柄をリスペクトし合い、これがきっかけとなって Fasten はバルセロナ進出へのチャンスをつかんだのである。

ロンドンから東京へ... その先に見えたもの

日本ではダンスミュージックで夜通し踊る行為は法的にグレーな事で、ギグの内容や質はその部分によって度外視されてしまう。 また、アーティストとサウンドエンジニアとのコミュニケーション不足は、「音楽」ではなく、「音」の質を低下させる。そのため、アーティストやオーガナイザーがクオリティーそのもので勝負していくには難しい状況と言えるだろう。しかし、そのような状況の中でも純粋に音楽に向き合うアーティストは依然として存在している。Fasten Tokyo のレジデント DJ として抜擢された Yoshitaca も、東京のシーンの現状を憂慮しつつ、将来を見据えているアーティストの一人ではないだろうか。

 

映像 : FMC @module/Tokyo

彼らの特有の生真面目さは、独自のフォロワーを生み出しているし、世代交代という大逸れた言葉ではなく、さわやかなアンチテーゼとして、 安穏とした日本のシーンに Fasten Musique Concrete が風穴を空ける事を期待していきたい。

 

myspace : fastenmusiqueconcrete

 

Represented by Fasten crew

Text edited by Osamu Yoshihara

Filmed by OCT-G
Visual edited by Yu-suke Kozuka