実験的演劇集団

ロンドン市内には大変多くのシアターがあり、演劇鑑賞の需要は日本に比べ非常に高い。開演時間が遅いことが多く、仕事帰りの老若男女の娯楽の一環として、一般に定着している。チケットの価格対は10ポンド以下 (約2.300円以下) のリーズナブルなものもある。また教育環境も整っているため、演劇の専門学校はもとより、学校では若い年次から演劇のコースが一般的な選択授業として受け入れられている。このような背景により、イギリスには大小多くの劇団が存在している。「サウスワーク・プレイハウス・シアター・カンパニー」はその一つであり、1993年に3人のメンバーによって設立された。彼らは、ロンドンのサウスワーク地区にある、廃墟となっていた工場を90人の観客が収容できる移動型シアターへと生まれ変わらせた。過去14年の間、サウスワーク・プレイハウスはサウスワーク自治体と密接に連動し、地域の教育を改善すべく、多大な貢献をしてきた。この劇団からは、演劇界の第一人者を多く輩出しており、 Daniel Radcliffe (ダニエル・ラドクリフェ) の出演で話題を呼んだ Equus の監督 Thea Sharrock (シア・シャーロック) も出身者の一人である。

 

写真 : 演劇 『 You Can’t Take It With You』 より

駅下スペースの観客参加型シアター

ロンドンブリッジからヒルトンホテル方面に進むと、''Southwark Playhouse'' と書かれた小さな看板が見えてくる。その周辺は照明が暗く、まるで秘密基地のような佇まいだ。そこがロンドンブリッジ駅の下スペースへと繋がる。レンガの壁に囲まれたスペースを更に進むと中にはバーがあり、観客は開演時間までこのバーで待つことになる。しばらくすると、開演時間前だというのに衣装に身を包んだ俳優たちがバーに現れ、観客に話しかけたり、演説を始めたり、思い思いに動き始める。そして開演時間になると俳優たちは観客に混じったままショーを始め、突如待合室であったはずのバーが舞台へと変わる。

そう、このサウスワーク・プレイハウスの特徴は、''観客参加型'' であること。観客はひとりひとり衣装を手渡され、その衣装に身を包んだまま、いくつかの舞台を移動する。この劇場は奥行きがあり、場面によって舞台が設置されている。暗い中を進んでいく観客たちは、遊園地のアトラクションを彷彿とさせる。そしてアトラクション的要素の楽しさだけではなく、その演劇レベルも非常に高い。それ故、あっという間に引き込まれてゆくのだ。

再開発による移転計画

実は、現在のロンドンブリッジ駅下を利用した隠れ家的劇場は、劇団にとっては仮住まいであり、2010年には南ロンドン・エレファント&キャッスル地区に移ることになる。現在サウスワーク自治体では、エレファント&キャッスル地区の再開発を計画している。エレファント&キャッスル地区といえば、「治安があまりよくない」という評判があるが、London Park Hotel (ロンドン・パーク・ホテル) の跡地を立て壊し、470戸に及ぶ住宅ユニット、ショッピングエリアを含めた複合開発地に生まれ変わるという。この再開発地区でサウスワーク・プレイハウスは、200名収容可能なシネマ・コンプレックスならぬシアター・コンプレックスを拠点にすることになる。

 

エレファント&キャッスル地区ウェブサイト  http://www.elephantandcastle.org.uk/

You Can’t Take It With You

写真は、今月17日まで公開中の1930年代を舞台にしたコメディ『 You Can’t Take It With You』。エキセントリックで自由奔放な Sycamore 家。しかし、娘 Alice が婚約者から、神経質で保守的な両親を紹介されたことから歯車が狂い始める... 「ウエスト・エンドのどのショーよりもはるかに素晴らしい。(Kate Bassett / Independent)」とも批評された、この実力派実験的劇団。チケットの購入はウェブサイトから。

 

サウスワーク・プレイハウス

http://www.southwarkplayhouse.co.uk/

 

Written by Tomoko Hayakawa

Photos by Miho Watanabe