英国王室最盛期を体感できる宮殿

ハンプトン・コート宮殿は英国ロンドン南西部、リッチモンド・アポン・テムズ・ロンドン特別区 (サリー州) にある旧王宮。ヘンリー8世時代の王宮としてゆかりが深く、歴代君主の居城ともなってきた。現在は主要な観光名所として一般公開されており、中でも毎年開催される「ハンプトン・コート宮殿フラワー・ショー」は、世界最大規模の花の祭典として注目度が高い。そして迷路 (メイズ) と呼ばれる広い庭園は一見の価値有り。しかし200年余りの間、英国の宮廷生活、政治、歴史の中心舞台となった由緒正しいこの建物は、悲劇的逸話が多数存在する ''曰くつき'' の場所でもあった。

宮殿の由来

1514年、ヨーク大司教であり王の主任公使だったトマス・ウルジーが賃貸を引き継ぎ、翌1515年から1521年の7年間にかけて14世紀のマナーハウスを再建。そして現在の宮殿の基礎を作り上げた。しかしヘンリー8世はこの屋敷がお気に召し、半ば強制的に己のものにしてしまう。これをきっかけに、1737年のジョージ2世の時代まで、200年もの間、王族の宮殿として使用された。現在のハンプトン・コートは、ヘンリー8世が再建した「チューダー様式」と、後にウィリアム3世とメアリー2世によって増築された「バロック様式」の建造物が組み合わさったものである。ちなみにヘンリー8世は、英国周辺にハンプトン・コートと同じスタイルで49の宮殿を造ったが、全て現存していない。

宮殿の特徴

ここには、ヘンリー8世が再建した大ホールとロイヤル・テニスコートがあり、大ホールはイギリスの君主によって造られたものとしては中世最後のものである。テニスコートは現在でもコート・テニスの試合に使用されるが、これは現代のテニスとは異なる。また、アートコレクションと庭園で有名であると同時に、宮廷料理の主要な研究センターでもある。歴史学者がヘンリー8世 (食道楽として知られた王) のために用意された当時のご馳走を再現し、毎月第1週目の週末には偉大なるチューダー王朝の料理が体験できる。

迷路園

世界的に有名な『ハンプトン・コート宮殿の迷路園』は、60エーカー (243,000平方m) に及ぶ川沿いの庭園の中にある。1689年から1695年のいずれかの年に、ジョージ・ロンドンとヘンリー・ワイズによってウィリアム3世のために植栽されたもの。規模は3分の1エーカー (1300平方m) で、半マイル (800m) の散歩道を含んでいる。現在のデザインは初期の迷路とは異なり、補修の際に様々な種類の木が生け垣に用いられた。この迷路園について多くの著者が言及しており、作家 / ジャーナリストのダニエル・デフォーは迷路園を誤って ''迷宮'' と呼んでしまった。また、ユーモア小説家のジェローム・K・ジェロームは、著書の『ボートの三人男』で迷路の難しさを誇張している。何故なら、迷路にはあまり分岐点がなく、唯一の分岐点は間違った道に入ってもすぐに行き止まりになっていたからだ。

現在では、更に大きく精巧な迷路が数多く存在している。近年、分岐点が3箇所新しく導入されたが、入り口に展示された地図には表示されていない。しかし、入り口から中央まで右手を常に壁に当てたままにするという ''右手法'' は未だ有効で、迷路の入り口から中央まで進み、戻ることができる。この方法は挑戦者をいくつかの袋小路に導いては、また脱出させるが、最短距離で出られるというわけではない。

監視カメラが「幽霊」キャッチ

2003年10月、宮殿に設置された監視カメラが「長い衣装を着た不可解な人影が火災扉を閉めている姿」という不明瞭な映像を記録していた。広報によると、その夜は人が出入りしないはずの防火扉が開いて警報機が鳴る騒ぎが3回発生し、その内2回は監視カメラに何も映っていなかったが、残る1回は警備員が監視カメラに映る奇妙な物体を目撃。そして ''この映像は幽霊の実在の決定的証拠を提供することになる'' と主張した。果たしてこれは本物の幽霊なのだろうか...

 

映像 : The Henry VIII's ghost

心霊現象の根源

まずはヘンリー8世に仕えた6人の后たちを紹介。

 

- キャサリン・オブ・アラゴン

ヘンリー8世は世継ぎ誕生を強く希望したが、流産や死産を繰り返すばかりであったため離婚された。

- アン・ブーリン (キャサリンの侍女)

子供は生まれたが女児であったため、何が何でも男児の誕生を望むヘンリー8世により「姦通罪」をでっち上げられ、ロンドン塔にて斬首された。

- ジェーン・シーモア

待望の男児 (エドワード) を産んだが、本人は出産に耐え切れず、死亡。

- アン・オブ・グレーブス

すぐに離婚。

- キャサリン・ハワード

ヘンリー8世が見て見ぬ振りをしているのを良いことに不倫を繰り返していたが、最後には「姦通罪」としてロンドン塔にて斬首された。

- キャサリン・パー

学識高く、メアリー、エドワード、エリザベスの教育係も務めた。病み衰えたヘンリー8世は、彼女に看取られながら58歳で他界。

 

そのうち霊となって出没するのが、ジェーン・シーモアとキャサリン・ハワードらしい。

心霊現象の真相

第三王妃ジェーン・シーモアは、1537年にハンプトン・コートで後のエドワード6世を出産したが、12日後に死去した。彼女の幽霊は玉石を敷き詰めた中庭で、火を灯した細長いろうそくを持った姿で目撃されている。そして第五王妃キャサリン・ハワードは、 1542年に王の護衛に逮捕され引きずり出される直前、王の救いを求めてロング・ギャラリーを悲鳴を上げながら走っていったと言われている。許しを請いながら廊下を引きずられていく様子や、チャペルのドアを拳でバンバン叩きながら金切り声で叫ぶ様子が多く目撃されている。 その他、アン・ブーリンの幽霊や悪名高いヘンリー8世自身の幽霊が現れるという報告もある。

最後に

今回紹介した幽霊の他に、エドワード王子の乳母であったシベル・ペン、通称「The Lady in Grey」が姿を現したり、宮殿内の一室「The Wolsey Closet」には奇妙な空気が漂っていると観光客に指摘されるほど。また犬を目撃したという人々が続出している。英国王室最盛期を違う形で体験してみるのもいいのでは?

 

アクセス方法 : ウォータールー駅から South West Trains で Hampton Court 下車。

 

Website : http://www.hrp.org.uk/

Source : All Info About London

 

Written & Photos by Toshimi Takaishi