Rough Sleepers

カムデン駅からチョーク・ファーム・ロードを歩き、かの有名なマーケット群を少し通り過ぎたところにあるセレクト・ショップ、『Rough Sleepers (ラフ・スリーパーズ)』 。鏡を一面に使った内装が特徴で、お店の中に入ると、鏡で反射したショッピング・カートの中に自分が入っているように見える仕掛けになっている。真っ白の壁と、鏡に写る爽やかでキュートなデザインの服。今年2月にオープンしたばかりのこのお店、実は NOVAS (ノヴァス) というチャリティ団体が経営する、ホームレスへの支援を目的とした画期的なセレクト・ショップなのだ。

 

Address : 43 Chalk Farm Road London NW1 8AJ

Tel : +44 (0)20 7485 4848

Open : Tue - Sat 10:00 - 18:00 / Sun 11:00 - 17:00

Website : http://www.novas.org/

 

チャリティの必要性

「ショッピング・カートは、路上生活者達が全財産を運ぶ道具。私たちと彼らの生活において、ショッピング・カートという交錯点があるけれど、その使い方、重要性は双方全く異なるもの。そこに皮肉を感じ、その違いを表したかった。」 と語ってくれたのは、このプロジェクトでインテリアデザインを担当した日本人アーティストの大渕園子さん。数は近年減少の傾向にあるものの、未だ英国内で深刻な問題の一つとされている路上生活者達 (= ラフ・スリーパーズ) 。実際、ロンドンの街を歩いていると、スーパーの前や、電車の中など、様々な場所で小銭を乞うホームレスの数に驚くことだろう。中には老人もいれば、小さな子供を連れた母親までいる。そういった人々の為の宿泊施設運営、また彼らの社会復帰をサポートするという目的の下に始められたのが、このチャリティ・プロジェクトだ。

チャリティの仕組み

このプロジェクトでは、ラフ・スリーパーズのお店で販売によって発生した利益は、デザイナーへと渡されるデザイン料を除いて、全て社会復帰を目指すホームレスや元ホームレス、その他社会的弱者とされる人たちへ向けてノヴァス・グループが主催するチャリティに寄付されるという仕組みになっている。主な寄付先はカムデンにある、ヨーロッパでも最大のホームレス専用の無料ホステル、 Arlington House (アーリントン・ハウス) で、こちらではファッション、デザイン業界でのキャリアの第一歩となるトレーニング・プログラムを推進している。

自分自身で頑張れる場を

実際に店内で扱っているアクセサリーの一部は、元ホームレスで以前アーリントン・ハウスにも宿泊していた、 Ramon Barreto (ラモーン・バレット) 氏の手によるもの。以前は路上で安価の手作りアクセサリーを販売していた彼だったが、現在 Issay Miyake (イッセイ・ミヤケ) で活躍しているアクセサリー・デザイナー、 Ikuko Kato さんの下で技術を学び、今では同店で自身のアクセサリー・ラインを市場価格で展開するまでになった。社会的弱者だからと言って、同情しているだけでは根本的な解決には至らない。彼らの将来の為に、しっかりとした技術を身に付けられるような場を設け、彼ら自身の力での自己再生を促す、というのが、この会社の方針だ。また、カジュアルなメンズウェアデザインで人気を集める Kim Jones (キム・ジョーンズ) 氏のスタジオが店舗の裏側に設置されており、支援プログラムの一環として、彼によるデザイナーのトレーニング等も日常的に行なわれている。

足を運ぶ価値のあるお店

チャリティであるからこそ、商品のセレクトには力を入れているというラフ・スリーパーズ。 従来の Oxfam (オックスファム) のようなチャリティ・ショップとは違って、デザイナーズブランドのコレクションを扱っていきつつ、学校を卒業したての才能あるデザイナーの一点ものなども販売している。2007年春夏の取り扱いブランドには、 Robert-Cary Williams (ロバート・キャリー・ウィリアムズ) 、 Vinti Andrews (ヴィンティ・アンドリューズ) 、 NOM*D (ノム・ディー) 、 DEXTER WONG (デクスター・ウォン) 等、バラエティに富んだ名前が並ぶ。ニュージーランド出身のデザイナー、 NOM*D のラインは、イギリスでは現在この店舗のみで購入が可能。

 

Price : 虫 T シャツ NOM*D £53 / ブルー × 白のチェックワンピース NOM*D £142

前向きで希望溢れるチャリティ・プロジェクト

このプロジェクトに関わることで、ロンドンの街のそこかしこで見かけるホームレスの人々への接し方も変わったという大渕さん。インテリアデザインの他にもサイトマネージメントも務めた。 「以前は彼らにお金などを求められてもどうしたら良いか分からなくて戸惑ってしまっていたけど、今では 『カムデンに大きいホステルがあるからここにいるよりそこに行った方が良いよ』 と教えてあげたりして、彼らともきちんと向き合えるようになった。」 と笑顔で語っていた。日本人にとってチャリティという言葉は近寄りがたく聞こえることもあるが、ここでは好きな服を買うことが困っている人の手助けをしているということ。物怖じせずに、ぜひ一度カムデンのお店を訪れてみては?

大渕園子さん Website : http://www.sonoko.co.uk/

 

Written by Mai Matsuoka