CENTRAL St. MARTINS FASHION SHOW

2月16日金曜日。この日のコレクションのトップバッターとして、セントラル・セント・マーチンズ MA (大学院課程) ファッションショーは、幕を開けた。朝早い時刻ではあるが、会場の外は長蛇の列。プレス関係者ということで、早めに席を確保できたが、全員が会場入りするまでにかなりの時間を要した。公式スケジュールの中で、唯一学校という団体でショーを開催しており、学生ではありながらそのクオリティの高さから世界のファッション関係者の熱い注目を浴びている。その様子は毎回、大手企業がスポンサーとして参加することからも見て取れる。イギリスの伝統あるデパート、ハロッズに関しては、ショーの中から最も優れたデザイナーに、賞金として 5000ポンド (日本円約125万円) と、ハロッズのショーケースに2週間作品をディスプレーできる権利が渡された。

CENTRAL SAINT MARTINSとは?

通称セントマと呼ばれるセントラル・セント・マーチンズは、ロンドン芸術大学のカレッジの一つで、アートとデザインを幅広く教育し、世界的に活躍する有名デザイナーを多数輩出している伝統校である。ジョン・ガリアーノ、アレキサンダー・マックイーン、フセイン・チャラヤン、ステラ・マッカートニー、フィービー・フィロといった有名デザイナーがかつてここを巣立った。そして、今回のロンドンファッションウィーク参加コレクションデザイナーのうち、21組がセントマ卒である。そして、セントマの中でも MA は更にレベルが高く、一目置かれた存在であり、新人デザイナーの登竜門といっても過言ではない。期待に胸が膨らむショーの中から、次世代のホープを5組紹介しよう。

 

Website : http://www.csm.arts.ac.uk/

 

TATIANA KATINOVA

19人のデザイナーの中から選ばれたのは、ウィメンズウェアコースの 「タティアナ・カティノバ」 である。彼女の作品は、マスキュリンを意識した仕立ての中に、しなやかに見せた曲線の美しさが完璧なスタイル。誇張されたヒップラインにくびれたウエスト、ペンシルスカート、背中のジップアップまで、流行を捉えた側面の中に、独自の華麗なカッティングが光る。 「今回のショーはどの作品も素晴らしく、選ぶのが困難であった。しかし、彼女のサビルロウ筋の仕立技術と、実際に着用に適する洋服であることが勝因となった。そして、何よりもただ美しい!!」 そう審査員に言わしめた彼女。まずは、 3月9日から2週間、ハロッズのショーケースにて彼女の世界観が展開される。今後の活躍に世界のファッション関係者が注目している。

ANNA SCHMIDT RISAK

ウィメンズウェアコースの 「アンナ・シュミット・リサック」 の作品は、カジュアルさの中に、上品で華麗な雰囲気を存分に発揮した魅力が満載。黒・白・グレーといったベーシックなカラーに、シルエットやボリュームで差をつけ、女性らしい甘めのデザインの中にどこかシャープな要素も取り入れている。今シーズン、どこのショーでもウエストマークは基本であったが、 3本のベルトモチーフを重ね合わせた太ベルトをここまでモダンに美しく組み合わせた絶妙なデサインと、コーディネート力には脱帽である。学生とは思えない程のクオリティの高さを見せつけ、知的なアプローチで観客を魅了した。全てのアイテムを今すぐにでも手に入れたくなる程、抜きんでた個性が一際目を引いたデザイナーである。

KRZYSZTOF STROZYNA

ベージュ×ブラックを独特な世界観で発表したウィメンズウェアコースの 「クリストスフ・ストロジナ」 は、気高さと強さを兼ね備えた作品。トーンや素材感の異なるシルエットの美しいベージュの服を、ベルトでしっかりとウエストマーク。じゃらじゃらとコーディネートされたジュエリーもブラックだからこそ、ここまでシックにまとまるのであろう。立体的なジュエリーにも、フラワーモチーフで柔らかさを含ませ、チェーンでハードさを添える。ミニマムなスタイルに、バランスの良い最大限の主張を加え、エレガントな気分を演出した。

 

ANDRES AZUBEL TAYLOR

メンズウェアコースの 「アンドレ・アズベル・タイラー」 は、きっちりとまとめられたトラッドな英国調スタイルをこまかな遊び心ではずしながら新たな展開を見せた作品。ゴールドの細いベルトや、透ける素材のコート、ホワイトのレギンス等、正統派スタイルに爽やかなセクシーさを投じた。登場回数の多かったシャツに関しても、小さな襟が特長的で、あえて羅列されたボタンを隠し、すっきりと見せた。一見クロップドパンツのようなパンツの丈も無造作なコーディネートで個性を発揮した。伝統的なロンドンのメンズファッションに、新たな息吹を吹き込み、ますます面白く盛り上げてくれる予兆が感じられた。

 

 

LOUISE GRAY

テキスタイル・フォー・ファッションコースの 「ルイス・グレー」 のコレクションは、レッドやオレンジ、グリーン、ブルー、イエローといった原色の鮮やかなカラーが元気いっぱい飛び出した。まるで抽象画のキャンバスのような独創的でアーティスティックな作品は、幾何学的に立体的に構成されている。胸元には、ゴールドチェーンにバラのモチーフを施し、斬新なアイテムをぶら下げた。足下に飾られたカラフルなポンポンも、色の織り交ぜ方から肉付け方まで、見事にバランスをマッチさせるのは、彼女の天性の才能であろう。晴れやかな気分になるポジティヴな空気感を届けた彼女。類を見ないデザインセンスには、目が離せない。

ショー全体を通して

数えきれない程のデザイナーが存在する現在、世間に頭角を表すことは並大抵の努力ではないだろう。今回ショーを通して、一人一人のモチベーションの高さ、それをバックアップする指導者の存在、そして世界の関係者が注目し、サポートするその偉大な体制に、ファッションを勉強するのにセントラル・セント・マーチンズが、格別に支持される理由が明確に見えた。夢と希望に満ち溢れた強大なパワーと、もはや学生というレッテルは必要ない程の、クオリティの高さには圧倒されっぱなしであった。近い将来、どこかでまたすぐ出会えそうな予感がする新人デザイナー達の、今後が楽しみである。

 

Written by Mai Yomura