始めに

London College of Fashion (以下 LCF)という学校をご存知だろうか? LCF は、5 つの学校から成り立つ University Of The Arts London という大学の中のファッションを専門とする学校だ。この大学の中には、あの Saint Martins College Of Art And Design も含まれており、有名デザイナー達(アレクサンダー ・ マックイーン、ジョン ・ ガリアーノ、ステラ ・ マッカートニー、フセイン ・ チャラヤンなど) を輩出しているため、おそらく日本ではセントマーチンの名を知る人の方が多いと思う。正確に言うとここは、アートスクールの中のファッション科であり、クリエイティブ、アーティスティックといったことを重視しているので、個性的なデザイナー達を生み出している。では LCF はというと、商業的 Industry Base の学校だ。もちろんクリエイティブであることも重要だが、売れなければ商売にならない!といった考え方で、よりファッション産業そのものに密着した学校である。

LCF の歴史

1950 年代後半に建てられた LCF の本校 Oxford Circus の校舎は、伝統的なヴィクトリアン ・ スタイルの建物とは違い、移り逝くロンドンの街と共に、新しい時代とテクノロジーを表す “モダニズムスタイル”の建物にデザインされた。Oxford Street というロンドンを代表するショッピングエリアに面している立地は、常に流行の流れを見ることができ、ファッションを学ぶのに最適な場所となる。 LCF の母体となる学校は、20 世紀前半に合併された Institutions Shoreditch, Clapham, Barrett Street Trade School である。近年、伝統ある靴の専門学校 Cordwainer’s College も吸収合併された。当時の授業は、人口の大半を占めていたワーキング ・ クラス (低所得者) の若者達を減らすため、パターン ・ メイキングやドローイングなどのカリキュラムの他に、職業訓練校のようなマナーのレッスンや体育などの教育も組み込まれていた。

いくつも選べる幅広いコース

パターン ・ メイキングなどの技術面を重視したコースから、マーケティング ・ ビジネス、プロモーション、ファッション ・ フォトグラフィ、ヘアメイク、さらに映画などの特殊メイクなど、ファッションに関するあらゆるコースがある。またレベルも準備コース(1 年)、本科コースは 2 年の Foundation Degree (日本の短大レベル)、3 年の BA (日本の大学レベル)、MA (大学院)があり、その他プロフェッショナルを対象としたコース、夜間の短期コースなど幅広くある。短期留学希望の人は、準備コースの中にある Access Program という 1 年のコースに行く人が多いようだ。これはビジネスコース、プロモーションコースとあり、1 年間である程度の専門知識が身につくようにプログラムされていて、この本科コースに行くことも、1 年で終わらせて社会に出ることも出来るようなカリキュラムが組まれている。

Experience 其の一

ここで私の通った LCF の 2 つのコースを紹介したい。

1. 準備コース ( Access Fashion Business Course )
カリキュラム ・ ファイナンス、マーケティング、リテール、プロダクト ・ デベロップメント、PR など、ファッション ・ ビジネスに関する一通りの科目。準備コースということもあり、クラスメートは外国人 (イギリス人以外の人たち) が多く、特にアジア人の割合が高かった。中には一度社会に出たが、転職のために勉強するイギリス人もいた。当時私の英語力不足のせいもあって、この 1 年間はとても辛かった。本来は、2 年程費やして受けるカリキュラムだが、1 年に短縮していることで、学校はほぼ毎日午前 9 時から午後 4 時半までみっちりとあり、ビジネスコースのため全てレクチャー、課題は論文かビジネスリポート。右も左もわからない状態での市場調査などなど。正直この 1 年間はただひたすら勉強。

ちなみにファースト ・ ターム(1 学期)の課題では、9 本の論文を抱えて、“ 5 日間の徹夜” という人生で 2 度と体験したくない経験をした。しかしここで基礎を学び、リサーチ ・ テクニックなどを覚えた (というか辛さに慣れた?) ことは、後々のためになったと今では思える。1 年間で楽しく学校の雰囲気を体験してみたいという留学生は、もう1つのアクセス ・ コース Fashion Promotion コースを選ぶことが多い。こちらはフォト ・ シューティングやフォトショップのワークショップ、ドローイングなど、レクチャーではない科目があり、ビジネスコースと比べるとアート的な要素が高い。

Experience 其の二

2. 本科コース ( Foundation Degree of Arts Fashion Design and Marketing Course ) カリキュラム ・ パターン ・ メイキング、ソーイング、デザイン、マーケティング、プロダクト ・ デベロップメント、ファッション ・ フォレキャストなど、このコースはまだ出来て 2 年目ということで認知度が低いのか、日本人はクラスで私 1 人だけ、アジア人はタイ人が 1 人だけと準備コースの時とは打って変わって、イギリス人率がぐっと上がった。その分英語のハンディキャップは際立ち、1 年生の始めの時などディスカッションに加われないということも多々あった。このコースの他と違う所は、パターンなどの技術面の授業と、ビジネスの授業が両方あることだ。他のコースは大体ビジネスならビジネス、デザインならデザインとどちらかの方面に分かれている。このコースは主に、バイヤーや商品企画、デザイナーなど幅広いファッションの知識を求められる職種を目指す人向けということだ。

授業は大半、商品企画をテーマに課題が出されるので、ディスカッションやプレゼンテーションがあり、クラスメートの前で英語を話さなければならない状況 (当たり前なのだが) が多く、ある意味英語の上達には良いかもしれない (ちゃんと話さないとわかってもらえないため)。パターン ・ メイキングなど技術面の授業は、基礎を学ぶといった感じではあるが、デザインの課題とリンクしているので、最終的に自分のデザインを形にしなくてはならない。経験の無い人には辛いかもしれないが、服作りの流れを完全に掴む事ができる。課題はすべて実在する企業へ向けての商品企画やマーケティングなので、もちろん情報もプロフェッショナルと同じ専門のマーケティングなどのウェブサイトを使い、実際の仕事にすぐ生かせるようにデザインされている。

終わりに

コースを通して思ったことは、例え言葉にハンディキャップがあったとしても、大事なのは “何をしたのか” と言う事で、内容がよければ “高く評価される” ということ。カルチャーの違う国で培われた自分のアイディアや意見が評価されるのは、大きな自信に繋がる。 LCF の 3 年間は、とにかくいつも課題に追われていたような感じで、不満も色々とあったが、それ以上に得たものも多かった。また、私の受講したこのコースはまだ新しく、生徒からの不満などの意見を取り入れ改善中である。ワークベースの勉強は、将来働く上で必ず役に立つだろう。ファッションのプロフェッショナルを目指すならば、LCF はお勧めの学校だ。

 

Written by Junko Mitsuishi