V&A ''Sixties Fashion''

1852年の開館から150年余り、常設展で見られる莫大な所蔵品の数と、その時代の風潮を反映した特別展で、未だ世間の注目を集めるイギリス美術館の権威、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館。ここで今年6月から、1960年代のファッションの特別展が開かれている。 60年代 イギリスは戦後の貧困から立ち直り、社会全体としても経済的余裕が生まれた。それ以降、大々的に若者のためのファッション文化が花開いたのだ。The Who を始めとするモッズなどの音楽も含め、イギリスが世界に文化を発信した時代だった。1965年 アメリカ 『ヴォーグ』 誌では、 「現在、世界で最もスウィンギングな街ロンドン」 と紹介され、1966年 『タイム』 誌が毎年発表する、マン・オブ・ザ・イヤーに1人の人間ではなく、「25歳以下」 という若い世代全体が選ばれ た。今期行われた各都市のコレクションでも、多数のデザイナーが取り入れたことで話題を呼んでいる60年代ロンドンのファッションとはどのようなものだったのか。

 

 

EARLY 60s MODERNISM / FUTURISM

60 年代のファッションは、大まかに言って前半と後半で2つの異なる思想に基づいて分類される。前半は、モダニズムとミニマリズムや、フューチャリズムを軸としたデザインが主流の時代だった。代表的なマリー・クワント (Mary Quant) ブランドは、1955年にマリー・クワントとアレキサンダー・プランケット・グリーンがチェルシーのキングス・ロードに、バザール (Bazaar) という名前で店舗を構えたことで始まった。10代から20代の若い女性層をターゲットとした、当時では画期的なブランドで、A ラインですとんとしたシルエットの、丈の短いワンピースが特徴。60年代前半を代表するスタイルであるこのミニスカート、既に一部の女の子たちの間で1950年代後半頃から流行の傾向があったものを、既製品として彼女の店で販売を始めたことで爆発的な人気を得て、世界中に広まったとされる。

BIBA

最盛期には、ロンドンのケンジントンに地上と地下を合わせて全 7フロアにも渡る巨大なデパートを開くまでに至った、イギリスの伝説的ブランド。1975年の経営破綻以降、ビバの名は長い間、ごく一部の古着好きに知られる程度だったが、昨年頃から再び注目を集めはじめ、ついに先日、新しいデザイナー陣を迎え、復活を果たしたことで世間の話題をさらっている。1963年、バーバラが夫のフィッツと共にはじめた通信販売がこのブランドの始まりで、当初は労働者階級の若い女の子にも買えるような価格設定だった。それが当時、若者に人気のあった女性タレントが好んで着用するなどして人気は沸騰、一躍、一世を風靡した。それまでのモダニズムやミニマリズムとは対照的に、懐古的なゴシック / ヴィクトリアン調のデザインが特徴。パフスリーブにたっぷりした袖の、丈の長いワンピースなどはその代表格とも言える。

Website : http://www.thebibaexperience.com

Ossie Clark

デザイナー、オジー・クラークの名前よりも、彼の妻であり、テキスタイルデザイナーとして彼とコンビを組んでいたセリア・バートウェルの名を聞いたことのある人のほうが今では多いのかもしれない。現在、若者に大流行中のセレクトショップ 「トップショップ」 から昨春限定で展開された、彼女のテキスタイルを用いたラインはあっという間に完売。あまりの人気に、先月第二弾が発売された。そして何よりもデザイナーのオジー自身、特筆すべき才能の持ち主で、専門学校を卒業した直後から業界の注目を集め、ヴォーグ誌で幾度となく特集を組まれるなどの人気ぶりだった。女性らしい滑らかなラインが素晴らしい作品を数え切れない程残している。左の写真内でモデルが着用している、当時流行していたペーパードレスもセリアと共にオジーが手掛けたもの。

Website : http://www.celiabirtwell.com

 

Zandra Rhodes

オジー・クラークとほぼ同時代に活躍したデザイナー、ザンドラ・ローズ。彼女の作品も個性的なテキスタイルが特徴だが、70年代前半までの彼女のデザインには、たっぷりとしたシルエットとエスニックな雰囲気に伴って、その時期に流行したヒッピーのような空気も流れる。 現在はトップショップで既に数年にわたりデザインをしており、そちらで彼女の手掛けた服が購入できる。もちろん他には無い、彼女ならではのテキスタイルも健在だ。また食器会社 ロイヤル・ダルストン (Royal Doulton) とも契約を結んでおり、陶器のデザインも提供しているほか、ホームページ上ではそれ以外にもインテリア、ジュエリーからなんとテントまで、様々なものをデザイン、販売している多才なデザイナーだ。

Website : http://zandrarhodes.com

現在も変わらない 60s の魅力

60 年代末のこうした流れは70年代の前半頃まで続き、その頃発生したグラム・ロックやニュー・ロマンティック、70年代後半に入ってすぐのパンクの誕生と、80年代のディスコ文化など、ストリート・ファッションは音楽と共に変遷を遂げていった。 そして今、60年代のファッションが再び注目を浴びている。ストリート・ファッションの始めとも言える60年代に活躍したデザイナーたち。40年経った現在でも、彼らの残したデザイン、裁断技術は未だ斬新で、独特の哲学を感じさせる。 もはや芸術作品とも呼べる彼らの作品を眺めながら、時代背景はもちろんのこと、そのインスピレーションの源と作品一つ一つの歴史に想いを馳せているうちに、何時間も過ごしてしまいそうな興味深い美術展だ。

Website : http://www.vam.ac.uk/collections

『シックスティーズ・ファッション』 2007 年 2月 25日まで

 

Written by Mai Matsuoka