Liberty

ロンドンでのショッピングに欠かせないデパートといえば、セルフリッジ、ハロッズ、ハーヴィー・ニコルスと、リバティである。それぞれに個性を持ち、ロンドナーたちに愛される中でも、伝統とトレンドの共存を図り、見事に成功させている「リバティ (Liberty)」。ピカデリー・サーカスとオックスフォード・サーカスを横断するリージェント・ストリートを歩いていると垣間見える、北欧の古い家屋風の大きな建物が印象的だ。1875年の創業当初から、東洋のファブリックを初めとする調度品を直輸入し、販売していたことで爆発的な人気を得、アール・ヌーヴォー期のロンドンに於いて大きな役割を果たした。また、日本でもお馴染みのリバティ・プリントのファブリックを生み出し、創業から100年後の1975年には、かのヴィクトリア&アルバート・ミュージアム (Victoria & Albert Museum) でエキシビジョンが開催されるなど、長く濃い歴史を誇る。しかしリバティが他のデパートと一線を画している理由のひとつは、何と言ってもファッション部門だ。ブランドの店舗をそのまま売り場内に設置するのではなく、様々なブランドから秀逸な商品だけを少しずつ揃え、デパート全体が大きなセレクト・ショップのような趣を持つ。そのセレクトは、 1884年の部門設置以来、120年以上経った現在でも高く評価されており、昨年2006年には British Fashion Award に於いて Shop of the Year にもノミネートされた。今回は、リバティ、メンズウェア売り場のバイヤー・マネージャーを勤めるダニエル・ドイル (Daniel Doyle) 氏に、リバティそのものから、バイヤー・マネージャーという仕事について、セレクトのコンセプトについて、氏自身の経歴、そしてプライベートにまで渡り、話を伺った。

Address : Great Marlborough Street London W1B 5AH

Tel : +44 (0)20 7734 1234

Open : Mon - Wed 10:00 - 20:00 / Thur 10:00 - 21:00 / Fri 10:00 - 20:00 / Sat 10:00 - 19:00 / Sun 12:00 - 18:00

Website : http://www.liberty.co.uk/

インタビュー

- バイヤー・マネージャーとしての仕事内容を教えて下さい。

 

勿論バイヤーとしてアポイントメントを取り、バイイングをするのが基本的な仕事なのですが、もう 1つ重要な仕事として、メンズウェア・フロア全ての管理があります。リバティのメンズウェア売り場内は、ハイ・エンドなブランドから成るコンテンポラリー・ラインと小物を販売するアクセサリー・ルーム、スーツ専門の3セクションに分かれており、それ以外にもビスポーク・テイラーや、先日オープンしたばかりのオイスター&シャンパン・バー、今月にはフロア内に理髪店のオープンも控えています。それらの部門全てを総合的に見ながら個別に監督して、彼らが常に新しい、エキサイティングなものを各々のセクションに運んできているか、ベストを尽くし、結果を出しているか、またプレスを含めたマーチャンタイズ等、そういったことを取り仕切るのも、バイヤー・マネージャーとしての仕事の1つです。

- リバティで働く前は何をしていましたか?

 

私は 16歳で学校を離れた為、ファッションの専門学校には行ったことがありません。しばらくは父のしていた宝石商の仕事を手伝っていたのですが、ロンドンでファッション関係の働き口を見つけ、こちらに引っ越してきたのが、この業界に入ったきっかけです。10年ほど前にはイギリスの小さなブランドで、小売りや販売、生産等、様々な分野での手伝いをしていました。その後は日本に移り住み、日本の SHIPS (シップス) のヘッド・オフィスに約4年勤めたのち、ニューヨークにあるバイイング・オフィスに転属となったのですが、しばらくしてシップスを辞めた後は現地でバイヤーのコンサルタントをしつつ、自身のショールームの運営もしていました。

- リバティに入ってから、バイヤー・マネージャーになるまでの経緯を教えてください。

 

普通は専門学校を卒業してから販売員として入社して、数年をかけてバイヤー・アシスタントとなり、それからバイヤー、バイヤー・マネージャーとなるのですが、私はリバティには初めからバイヤー・マネージャーとして入社しました。それ以前にバイヤーをやっていた経験は無かったのですが、東京やニューヨークで長年働いて得た人脈や経験を用いて、リバティへ、今までロンドンに無かったブランドや、ファッションへの観点を導入できるだろうと評価されたのが大きかったのだと思います。

- バイイングをする際に、最も重要なことは何ですか?

 

バイイングをする際に心に留めておくべきことは沢山あります。私の場合は、ブランドを見るのではなく、商品そのものを見ることがとても大切だと考えています。ファッション業界において、ブランド名だけが一人歩きしてしまうことは多々あるのですが、商品そのものの品質や、何よりも私自身、実際に着るかどうか、ということが、私がバイイングをする際にまず考えることです。アレクサンダー・マクイーン (Alexander McQueen) のように世界的に大きなブランドから、小さなカジュアル・ブランドまで関係なく、果たして自分や、または友人が実際に購入するだろうか。身に着けて、いいと思うだろうか。そういう商品こそリバティで提供するべきだと思っています。ショーやマーチャンタイズに因って入荷を決めてしまうということは絶対に有り得ません。

- リバティの持つ長い歴史、伝統についてどうお考えですか?

 

リバティには長い歴史がありますが、その中でも特に素晴らしいと思うのは、ここが、ほぼ初めて、アジアへと足を運び、現地の製品をイギリスで販売した会社だという点です。ヴィクトリアン朝時代の人々のアジア美術への傾倒を促進したのは、リバティだったと言っても過言ではないと思います。そして、このバイイングという仕事にも、現在のリバティについても、同様のことが言えるのです。常に冒険し、挑戦し続けていくことで、イギリスで他のどこも売っていないブランドを紹介し、他のどこのショップもやっていないことをするのが私たちリバティだと思っています。

- 今季のオススメを教えてください。

 

今季のメンズウェア・フロアでの 1つ目のオススメは、ガープ・ストア (Garp Store) です。今季が全くのデビューなのですが、アメリカやイギリスのヴィンテージをもとにしたデザインで、1930年代や40年代を匂わせる緻密なディテールに、使っている素材は最上級のもの。そして何より値段がリーズナブルです。デザイナーは実際に生産を開始するまで3年を費やして推敲を繰り返しており、とても興味深いブランドに仕上がっています。また、今季から置き始めたアメリカのスティーヴン・アラン (Steven Allan) も注目のブランドです。こちらは、ニューヨークでは随分と前から実績をあげているブランド。ガープ・ストア、スティーヴン・アラン共に、イギリスで購入できるのはリバティだけです。また今季のアレクサンダー・マクイーンのメイン・ラインもかなりいいものが出ていますし、アクセサリーではメゾン・マルタン・マルジェラ (Maison Martin Margiela) や、日本のポーター (Porter) もいくつか入荷します。シーズンごと、売り場ごとに入れ替わり立ち代り新しいものが常に入荷していますので、まずは店頭に見に来て頂きたいですね。

- フリータイムは何をして過ごしていますか?

 

そうですね。私は現在ボートを住居として生活しているので、今、夏のこの暖かい時期には比較的家でのんびりしていることが多いです。時間があれば友人と出掛けたりするのですが…ただ週末も働いていることがほとんどなので、何をして過ごすということは言えません。 2、3日の休暇ができた場合などは、ロンドンを出て、なるべく郊外に出掛けるようにしています。仕事から放れ、ショッピングもせずに休日を過ごせば、再びフレッシュな気持ちで月曜日を迎えることができるので、新しいアイデアが浮かんだり、バイイングの仕事も楽しめますからね。

- ドイル氏自身の、今後のプランは?

 

今の仕事はとても好きで楽しんでやっているのですが、プロダクト系の仕事にも興味があります。現在の、商品を選び取るバイヤーとしての経験を、将来は現存のブランド、新規のブランドに限らず、そのマーケットに合わせた商品の製造に活かしたい。また、以前にシップスで少しやっていたのですが、撮影やグラフィック・デザインも含めた、商品のマーケティングなども一度きちんとやってみたいです。そちらの方がバイヤーよりはもう少し生産的で、個々の商品に深く関わっていけますし。

年に数回ずつ、定期的にロンドンとニューヨーク、パリ、ミラノ、東京各都市を行き来しているというドイル氏。今回のインタビューの際も、パリとミラノのコレクションが終わったばかりでやっと一息ついたところだと言っていたが、コレクションの様子など聞くと、そこで出会ったプロダクトやデザイナーについて、熱心に話してくれた。新しいものと出会い、知らなかった世界を見る。人との出会いのように、リバティでファッションとの素敵な出会いを期待したくなる。

 

Interviewed by Mai Matsuoka