ステファン・ハサウェイ

1958年10月6日生まれ。イギリスの西方サウス・ウェールズ Crumlin (クラムリン) 出身のドキュメンタリー・フォトグラファー。リアルだけを追い続けて、およそ30年。リアルの中から生まれる、リアルなストーリー。リアルなストーリーから生まれる、人間のリアルな感情。それを見透かす彼の眼は、既にフレームと化していた。ゴシップを食い物にするパパラッチは、ただのモンスターであり、写真家ではないという。日常生活の中から偶然に起こるさまを、ありのまま伝えるのが、真の写真家。今回は、彼の辿ってきた道と共に、ドキュメンタリー・フォトグラファーとして探求してきた様々な人間模様、そして彼の眼を通して見る真実の世界に迫る。

 

 

ステファン・ハサウェイ・ストーリー

1974年、イギリスの Gwent College of Art & Design (グウェント・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン) へ入学。そして、グラフィック・デザインとデザイン・コミュニケーションの Bachelor of Arts (学士) 取得に励んでいる間、マグナム・フォト* の David Hurn (デイビッド・ハーン) に出会う。これをきっかけに、グラフィック・デザインを学ぶ傍ら、カメラを手にし、ドキュメンタリー・フォトグラフィーの地に踏み込んでいった。

 

* ニューヨーク、パリ、ロンドンそして東京にそれぞれ事務所を構え、現在約60名の在籍写真家・報道写真家が世界中で活躍しており、「世界最高の写真家集団」として現代でもその名声はつとに知られている。

Website : http://www.magnumphotos.com/

 

 

ドキュメンタリー = ヒューマン・ビーイング

Bachelor of Arts (学士) を取得後、The Royal College of Art (ロイヤル・カレッジ・オブ・アート) で、企業デザインとマネージメントの Master of Arts (修学士) の取得に励む。それと同時期、ドキュメンタリー・フォトグラフィーの基礎となる、人文学科を専攻し、終始勉学に励んだ。当時のことを、彼はこう語る。

 

「人文学を勉強していたものの、未来にこれがどう役立つかなんて全く見えなかった。実際私の専攻はデザインだったからね。しかし、Human Being (人間) の意を知ることは、私の世界観に大きな作用をもたらすと思ったんだ。」

 

その後、哲学や社会行動パターンなどの人間模様について学ぶが、最終取得試験を受けず、グラフィック・デザイナーの道を選び、歩むこととなる。

人生の転機

デザイン会社に勤め始めてから6年後、彼は世界中で超越する企業デザインや文化、宗教を題材にした論文を発表した。その内容は、The Swastika (卍) Mickey Mouse (ミッキー・マウス) Coca-Cola (コカ・コーラ) にまつわるものであり、いくつものデザイン・アワードで勝利を収めたのだ。その勝利と共に、 J Walter Thompson* (世界で最も大きな広告代理店) のアート・ダイレクターに招かれ、ニューヨークへ渡米。それからの5年間、ニューヨークで本格的にフォトグラファーとして再度活動を開始。アメリカの人々を撮り続け、写真の魅力に惹き込まれていった。

 

* Website : http://www.jwt.com/

 

 

写真家にとって大事なもの

Stephen Hathway (以下SH) : まずは ''万能なカメラと優れたレンズ'' 。それさえ揃えば、コンピュータは一切いらない。近頃、急速に発達したテクノロジーのおかげで、フォトショップ (Adobe Systems 社の画像編集アプリケーションソフト) を使い、自分の作品に手を加えるものが増えてきた。 例えば、空を青くしたり、煙を増やしたり...しかしそれは、絶対的にリアルではない。次に大事なのは、''被写体を理解する'' こと。ほとんどの人は、カメラを出すと態度が変わってしまう。レンズを見つけただけで、体が固まるんだ。だから被写体は、お互い知らないほうが良い。そして一番大事なのが、 ''センス'' 。アイコノロジーという言葉を知っているかな ? これは、狼に備わっている真の力であり、獲物の鹿がたくさんいる中で、1匹だけ特別弱いものを見抜くことができる。ようは、何千人の人間の中から、たった1人、何かが違うと感じられなければならないんだ。

自然に始まるリアル・ストーリー

SH : 昔、インディアンの鬘をかぶった1人のクリエ (自転車で配達をする人) を、頻繁に見かけていた。いつの日か、そいつはベトナム戦争時のヘルメットをかぶり、新しいキャラクターで、街を走るようになったんだ。1日18時間働いていたという、その男のバック・グラウンドは、親父がベトナム戦争で死んだんだと。彼は何を思い、扮装して仕事をしていたのか...不思議だろ ? この不思議から始まるストーリーこそが、被写体を理解する要点なんだ。もう1つ、ポール・ダンサーを被写体にしたときも、同じように疑問を持った。何故女性は、その世界に惹き込まれるのか...写真でストーリー性を打ち出すのは、とても大切なことなんだ。

真の能力

SH : どんな状況であれ、ドキュメンタリー・フォトグラファーである以上、真実を撮り続けなければならない。例えば、戦争やギャングの紛争など、危険なシチュエーションに遭遇したとき、普段よりもっと現実的に、その真実は立証される。War Photographer (ワー・フォトグラファー) で素晴らしい人がいる。Philip Jones Griffiths* (フィリップ・ジョンズ・グリフィス) という人物。彼が創った写真集 『VIETNAM INC. (ベトナム・インク)』 は、当時世界を揺るがし、人々に多大な影響を与えた。戦場で良い写真が撮れなかったら、真の写真家とは言えない。戦場は危険であるが、写真家にとってはグッド・コンディションであり、ネタがいっぱい転がっているんだ。

 

* Website : http://homepage.ntlworld.com/

様々な被写体

SH : 私はジャンルを問わず、たくさんの土地土地で、たくさんの人々をカメラに収めてきた。ストリートで遭遇する市民や戦場でぶつかり合う軍人、地元のギャングスター、精力みなぎるスポーツマン、田舎の生活模様など。題材はとてもシンプルだが、それぞれのバック・グラウンドの違い、シチュエーションによって、被写体の皮膚の下まで、見抜く力こそ、私のスキルと能力である。一度日本にも行ってみたい。おそらく日本のカルチャー、日本人の人間性が、これまでとは全く違うと思うんだ。

半世紀を迎えて

SH : これからも最善を尽くして、真実を収めてゆく。そして自分で自分の背を押し続け、カルチャーと向かい合っていくんだ。

 

All Photos by Stephen Hathaway

Interviewed by Toshimi Takaishi