Shepard Fairey (Obey)

どこかで見覚えのある左の顔。白黒の顔という以外は、他に何の情報も持たないシンプルなグラフィック。一体誰が何の為に作ったのか?この顔のモデルはフランス人プロレスラー「アンドレ・ザ・ジャイアント」。そしてこれこそがストリートから発祥し、今ではアメリカの巨大ブランドにまで成長したアーティスト「シェパード・フェアリー」による「Obey Giant (オーベイ・ジャイアント)」のアイコンである。

 

元々グラフィティアーティストだったシェパード・フェアリーは、当時スプレー缶によるレターグラフィティが主流だったアメリカで、プリントされたポスターやステッカーの可能性に一早く気付き、その後のグラフィティ界に多大な影響を与えた人物である。また今年開催されたロンドンでのソロ・エキシビションは、ロンドンアート市場が飛躍的に上昇したきっかけと言われ、アートにおけるシェパードの影響は "Banksy" と並び世界トップクラスといわれている。今回はそんな大物アーティストに US と UK アートの関係性について語ってもらった。

インタビュー

S : このエキシビションは、2冊の書籍「1984 (George Orwell)」と「Euphoria 」の書名から取って "NineEightyFouria" というタイトルなんだ。現代の人々の殆どは今の世界に自由と平和を感じている、しかし実のところ個人のプライバシーは無くなり、決められたシステムの中で生活している。これは一般的にあまり重用視されていないが、僕には深く関係している事なんだ。過去3, 4年間、この本に関係した作品を造り続けている。イラク戦争、思想無き消費者達、企業の無差別的な行動、ロンドン市内の監視カメラ等、これらもまた僕の作品のテーマの一部であり、僕が反発して来た事柄だ。今回ロンドンで1999年以来、8年ぶりのソロ・エキシビションを開くことになり、これら僕のコアになる要素を全面に出した大規模なショーにしようと思ったんだ。

- 今回ショーを開催するにあたっての経緯は?

 

S : このエキシビションは友人のストリート・アーティスト「D*Face」が運営するギャラリー、「Stolen Space」主催によるもので、僕と D*Face が最初出会ったのは1999年に開催した僕のエキシビションだった。それからよく連絡を取る様になり、いつか一緒にショーをやろうと相談を繰り返していた。しかしお互いの予定がなかなか合わずに、今まで実現出来ていなかったんだ。だから今回のショーは僕らの8年越しの計画なんだよ。D*Face は僕の事を良く分かってくれているし、これまでの経歴もよく知っているから一緒に仕事しやすいんだ。おかげで素晴らしいショーを開催する事が出来たよ。

 

写真:準備中のエキシビション会場

- これまでのスタイルの変化について?

 

S : いつもギャラリー用のポスターを作る時に、あえて少し多めにプリントして、それらをストリートに張りに行くんだ。また上質なポスター紙を使う事で高級感を出し、注文が入ってからプリントして売っていた。当時はまだ僕のアートの需要が低かったから、その方が効率が良かったんだ。でも時間が経つにつれ作品の価値は上がり、作風も様々な手法を使った洗練されたものになって行った。手書き、重ね絵、コラージュ、ステンシル、あらゆるスタイルを用いて、それらを様々な素材のキャンバスにあてはめる事でオリジナリティを創って行った。昔は1つのスクリーンプリントで300から350枚を刷っていたけれど、今では1イメージでだいたい5枚程度だけだね。またキャンバスのサイズも昔に比べ大きくなって来た。

 

写真左:キャンバス

写真下:正方形のプリント

- US と UK のグラフィティの違いは?

 

S : US ではまだスプレー缶を巧みに使った80年代 "Wildstyle" タイプのグラフィティが多いのに比べて、UK は ステンシルやポスター、ファイン・アートの様なものまでスタイルは様々だね。同じ様な "レター" を繰り返し描いているだけでは、少しストリートに対しての視野が狭い様に感じる。アートをジャンル分けしてしまうと、その分限界が狭くなり出来る事が限られてしまうからね。"Banksy" によって多くの人々が、ストリート・アートの存在を知り、たとえ "グラフィティ美学" を理解しない人達に対しても、価値のあるものとして認識させて来た。多くの UK ストリート・アーティストは Banksy の影響を強く受けているだろうね。これは本当に良い事だよ。1999年に渡英した時も UK ストリートアートが、"コンセプト重視" なのを強く感じた。

UK の雑誌や TV 番組を見ても思うけど、この国では "ユーモアの美学" が深く根付いている。まず最初にコンセプトがとても重用視されている。これは文化的に見ても US と UK の大きな違いだね。僕はそんな UK の "知的なユーモア" を高く評価している。多くのアメリカ人も同じ意見だと思うよ。とにかく今回のエキシビションを通して、多くのイギリス人が僕の作品を気に入ってくれて、本当にうれしいよ。US では僕は一般のファンを多く抱えている、でもロンドンで僕や作品の事を知っている人は、グラフィティ/ストリートアートのカルチャーに熱中している人が多いようだね。

- あなたにとって"アートの進化" とは?

 

S : 刺激的で新しい事であればそれは進化だと思う。これまでと同じスタイルを持っていても、その内容やコンセプトが新しくフレッシュなものであれば、それは進化していると言えるだろう。周りの人間がやっている事を真似して繰り返しているだけじゃダメだ。自分だけの事を見つけて作り上げて、始めて進化すると言えると思うよ。

 

写真:エキシビション会場で自らDJをして客を盛り上げるシェパード

Obey : http://obeygiant.com

D*Face : http://dface.co.uk

Stolen Spance : http://stolenspace.com

 

Written by Selph

Translated by Irie

 

写真:シェパードがデザインを手掛けた「レッド ツェッペリン」のアルバム・カバー