ステンシル・ストリートアートの先駆者

ukadapta が彼に最初にインタビューを行ったのは2006年のことだ。あれから3年、状況は大きく変わった。世界中で数多くのエキシビションを開催し、国際的に認められるアーティストとなった。ブリストルのグラフィティ・シーンにて、いち早くステンシルの可能性に気付きそのスタイルを進化させ続けた NickWalker は、現在も多くの人々を魅了する作品を生み出し続けている。今回我々はロンドンを離れてブリストルのアトリエを訪ね、この大胆不敵なアーティストの素顔に迫り、彼の魅力を探っていきたい。

 

映像:Nick Walkers Solo Show at BRP

「1992年に、僕はフリーハンドとステンシルを組み合わせた技法を始めた。そのおかげで、まるで写真のような正確さと荒削りな表現を同時に実現できるようになり、従来のグラフィティ・スタイルをさらに発展させることができた。ステンシルは僕の作品にインパクトを与えてくれる。ステンシルの魅力は、あらゆるところからイメージを膨らませることができるという点だ。生活のあらゆる部分を切り取って、新たな面に再生できるところだ。」

 

彼の過去のエキシビションをリストアップすると非常に長くなる。特に2000年初頭からは多くのエキシビションを行っており、世界中のアート・コレクターの間で非常に人気のあるアーティストの1人とされている。さあ読者の皆さん、Nick Walker のインタビューをお楽しみください…

- 今、作品で表現しようとしている新しいコンセプトはありますか?

 

N: 特定のコンセプトを意識して作品を創っていない。それよりも作品から "悪魔" を追い払う様な、儀式の様な気分で制作してるよ。中には自分自身のメッセージを込める作品もある、でも基本的には皮肉なユーモアを表現するのが好きなんだ。そこに自分が見て来た物、感じた事柄を当てはめるんだ、いま世界で何が起きているか、自分の頭の中に何があるか、そんな事を考えながら制作してるよ。

 

映像:NICK WALKER AT WORK

- ここ数年で、故郷ブリストルのストリートアートとグラフィティはどのように発展したと思いますか?

 

N: ここ5、6年で注目を集めるようになってきたと思う。15年前と比べると、ストリートで活動するライターも増えたよ。それに最近は、大学でアートやデザインを勉強しているクリエイティブな学生がストリートのシーンに多く流れて来た。彼らは学校でアートを勉強し、ストリートを表現の場として活用してるんだろうね。もともとグラフィティは学校なんか行けない貧乏なキッズが、クリエイティブな表現の場を求めてストリートに描いていたんだ。だから当時のライター達は、現在の状況は喜ばしく思わないかもしれない。でも僕は、違うフィールドの人達が参加する事で、ストリートに今まで無かった様な奇抜なスタイルが登場するからいいと思うよ。

- インターネットはマーケティング・ツールとして、アーティストのクリエイティブな発展に影響を与えると思いますか?

 

N: インターネットがマーケティング・ツールだという事を分かっているなら、自身の PR に利用できると思う。ただ他の作品をリサーチする道具としては、分けて考えるべきだと思う。インターネット上では様々なアート・スタイルを見ることができるので、自分がオリジナルな存在でいることは難しいと思う。色々なスタイルをインターネットで目にしてしまうと、その "コンセプト" を探求する気が失せてしまうかも知れないからね。でもその一方で、あるスタイルやコンセプトが人気があると知ると、自分ももっとそういうスタイルの作品を作らなければっていうプレッシャーを感じてしまうこともありえる。

- 1980年代に Blek Le Rat がストリートでステンシルを使用して以来、ステンシル・グラフィティはどのような発展を遂げましたか?

 

N: Blek Le Rat や、その他にもパリに住む多くのアーティストをステンシル・グラフィティの先駆者として見ることはできるけど、実際にメディアに注目されるようになったのは、Banksy と彼の仲間が取った方法のおかげだと思う。今や Banksy の名前は誰でも知っているし、一般の人たちもステンシルを手法の一つと認めて尊重するようになった。それにステンシルを使えば、街で作品を簡単に素早く描く事ができるからね。それがステンシルが流行ったもう一つの理由だと思うよ。壁に当ててスプレーするだけなので、ほんの数秒で立ち去ることができる。 だから警察に捕まるリスクも減るんだ!

僕がグラフィティを始めた頃は、ステンシルは一般的ではなくアーティスト達の間では "禁じ手" みたいなものだった。当時はフリーハンドの技術を磨くことがグラフィティの基本で、コントロールされた明確な "線" で描く、インクが滴ってるなんてありえないというのが暗黙のルールだった。90年代の初めに友人の 3D(Massive Attack)というブリストルのアーティストがステンシルを使っているのを初めて目にした。それでステンシルの可能性を知ったんだ。当時僕は、写実的な表現を必要とするプロジェクトを2つ抱えてたので、そのような効果を出すためにステンシルを使ってみたんだ。それ以来、ステンシルのリアルな表現に魅了された。でも今でもフリーハンドは続けているんだ。これはグラフィティに対する僕の愛情みたいなものだね。

- 現在のロンドンのストリート・シーンと今後についてどう思いますか?既にクリエイティビティの "ピーク" は過ぎてしまったと思いますか?

 

N: ストリートで活動するアーティストはいつだって存在するし、ストリートに頻繁に描くアーティストも常に何人かはいるだろう。その他は "流行" に乗って現れては、消えていくんだ。あと、今ロンドンでストリートアートの数が減ってるのは、CCTV による監視が増えてるせいもあると思う。でもそのせいでアーティストはさらに高い所に目を付けるようになり、屋根の上に描かれた作品が増えたんだ。カメラに監視されないで済むからね。

 

"ピーク" を過ぎたとすれば、それは世の中にグラフィティの要素が出回りすぎて飽和状態にある事にメディアが気付いたからだね。

確かに5年前は広告ポスター等に "グラフィティ" の要素が多く使われていた、同時にそれはストリートアートの数の多さにも表れてたよ。でも結局 "流行" は、時間が経てば色あせるものだよ。みんな次の流行に移り変わって行くんだ。でも本当のアーティストは変わらない。常にストリートに作品を生み続ける。作品を生み出すアーティストの側からすると、可能性を使い果たしてしまったとはまったく思わない。グラフィティ、ストリート・アート、ファイン・アートは混ざり合って、それぞれの接線が重なってきているけど、僕の心の中には常に「グラフィティは社会の汚点だ」という Norman Mailer の言葉がある。グラフィティという言葉には本来 "タブー" という意味合いが含まれていて、それが若い世代にとって常に魅力的なんだよ!

 

Website : http://web.mac.com/nickwalkerz

 

Written by Selph

Translated by Wakako Ito