Music Video と Promotion Video

ミュージック・ビデオとは、主に音楽の楽曲の発表に際して制作される、楽曲を含む映像作品です。CD 販売促進やアーティストの宣伝に、とても有効なメディア・ツールとしても幅広く認識されているため、近年では、プロモーション・ビデオ (PV 、プロモ) という呼び方が一般化されてきています。またミュージック・クリップ、ビデオ・クリップという呼び方もあります。しかし、その歴史はまだ浅く、まだまだ実験段階にあると思います。今回は2部に分けて、ミュージック・ビデオの歴史と現代の映像シーンについて、紹介していきましょう。

 

 

写真 : Chris Cunningham (クリス・カニンガム) 監督作品

Music by Bjork (ビューク) 「All Is Full Of Love」

世界で一番最初につくられたPV

20世紀初頭から、 「音楽と映像」 は随分研究されてました。それに対し予算を組み、音源の宣伝ツールとして世界で初めて制作されたのが、イギリスのロックバンド Queen (クイーン) の 『ボヘンミアン・ラプソディー(1975)』 と言われています。この PV は、クイーンのビジュアル的なインパクトと、彼らの肝であるライブ演奏シーンを正確に映像化し、音楽と映像のマッチングに成功しています。そしてクイーンは、このヴィジュアル・プロモーションのおかげで、当時一番旬なバンドとして世界中で認識されました。

MTV とミュージック・ビデオ

歴史を振り返る上で、ミュージック・テレビジョン (以下 : MTV) は、現代の映像業界にとって、なくてはならない存在です。MTV とは、1980年代初頭にアメリカで設立されたケーブルテレビの音楽チャンネルです。設立してまもなく、MTV の流行は、瞬く間に世界に広がっていきました。各レコード会社も、アーティストにおける PV の重要性を自覚し、莫大な予算を制作につぎ込むことになりました。MTV は、視聴者を若者に絞り、ミュージック・ビデオのクリエイターをリスペクトすると同時に、リアリティーにこだわった題材をモチーフにすることによって、新しいカルチャーを提示したのです。その MTV が発信した 「若者 = 音楽映像」 という傾向は未だに引き継がれています。

 

ミュージック・ビデオを鑑賞する上で

普段 「すごいビデオ」 と思わず言ってしまうビデオとは、どんなビデオでしょうか?ビデオを鑑賞するとき、どのように観ているでしょうか。ミュージック・ビデオは、映画やテレビ番組と比べると、短時間でより多くの情報を打ち出しています。音楽、歌詞、アーティスト本人のイメージ、演出されたアーティストのイメージ、映像としての美しさ、ジャンル、物語など...それらを踏まえて、視聴者に1つのメッセージを明確に伝えているのです。ここでは、一般的に名作と呼ばれるクラッシックな作品をいくつかご紹介しましょう。

Michel Jackson : 1982

マイケル・ジャクソン 『Thriller (スリラー)』 のミュージック・ビデオは、近年多用されているショート・フィルム風に構成されています。当時、マイケルが熱中していたホラー映画からヒントを得て、 『ブルース・ブラザーズ』 で有名なアメリカ映画の巨匠ジョン・ランディスに、彼自身がオファーしたというのは、よく知られています。ジョンは、マイケルのキャラを巧みに反映し、彼が持つ変身願望 (スーパースターと凡人、黒人と白人、人間と狼男) を比喩したと解釈されます。エンターテインメントなのにも関わらず、マイケルのキャラを間接的に表現したこのミュージック・ビデオは、アートと言えるでしょう。

 

> フルバージョン

Cyndi Lauper : 1985

とめどなく PV が流れていた MTV 設立当時、宣伝の戦略がひしひしと伝わってくるほど、頻繁に登場した PV がありました。それは、シンディー・ローパーの 『The Goonies 'R' Good Enough (グーニーズ・アー・グッド・イナフ)』 です。この曲は、映画 『グーニーズ』 とのタイアップで主題歌に使われ、PV のストーリーは、彼女自身が主人公として、グーニーズに出会うといった内容になっています。映画と曲、アーティスト全てをプロモーションしているという面で、とてもエンターテインメント性が高い PV でしょう。この最後には、映画の監督スティーブンス・ピルバーグも出演しています。

R.E.M. : 1991

『Losing My Religion (ルージング・マイ・レリジョン)』

ヴォーカルのマイケル・スタイプの特徴的なライブパフォーマンスをうまく生かし、絵画的なフレーミングでビデオの統一感を保っています。ショットとショットの間に入るフラッシュの様な手法も、このビデオが初めてと言われています。イメージ・シーンでは、強い宗教を彷彿とさせる比喩から、国によっては放送できなかったりしました。それだけ PV がメッセージ性の強いメディアか示した出来事でした。このビデオは、1991年の MTV ミュージック・ビデオ・アワードで Best Video (ベスト・ビデオ) を受賞。

Radiohead : 1995

レディオヘッド 『Just (ジャスト)』 のミュージック・ビデオは、演奏シーンと物語の2部構成になってます。最終的に、その2つのシーンが交わるといった構成美はさることながら、リリース当時から現在に至るまで、物語部分の解釈、リリックとミュージック・ビデオの関連性に、ファンは議論し続けています。ミュージック・ビデオに字幕をつけ、物語を説明してくという、従来にはなかったその手法は画期的で、ミュージック・ビデオのスタイルが確立しつつあった90年代半ばに、新しい流れを作りました。ちなみにこれは、ロンドンのリバプール・ストリート駅で撮影されました。

第1部を経て

次回は、1990年代後半から現在に至るまでのミュージック・ビデオの革新的な発展と、新しいクリエイター達に焦点を当てていきたいと思いますので乞うご期待!

 

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写真 : Michael Gondry (ミッシェル・ゴンドリー) 監督作品

Music by The White Stripes (ザ・ホワイト・ストライプス) 「Fell in Love With a Girl」

 

Written by Tomohiro Ichikawa