ユニークなステンシル・アートで人気を誇る UK グラフィティ・アーティスト BANKSY (バンクシー) は、皆さんもよくご存知だろうが、ここに偉大な事実がある。実は、バンクシーが世に出る20年前、世界で一番最初に、ストリートでステンシル・アートを表現したのは、フランス出身のグラフィティ・アーティスト Blek Le Rat (ブレック・ル・ラット) という人物である。彼は、現在活躍する多くのアーティストの手本となっており、ステンシル・グラフィティの ''産みの親'' と言っても過言ではない。今回 UK Adapta (ユーケー・アダプタ) は、UK 初ソロ・エキシビジョンで来英したブレック・ル・ラットとの接触に成功。20年以上もの長い間、ストリートと触れ合ってきた大御所アーティストの独占インタビューをお届けしよう。
UK Adapta (以下 U) : ステンシルをストリートで打ち出そうと思ったきっかけは何ですか?
Blek Le Rat (以下 B) : まず自分しか出来ないこと、人々が見たことないものを表現する必要があったんだ。当時、タギングやレターが主流となっていたんだけど、それらを創りたくなかった。私に出来るとも思わなかったしね。そこで考え、生まれたのがステンシル・グラフィティだったんだ。
U : デビュー作は何ですか?
B : ネズミのステンシル。パリの街を這いつくばっている嫌われ者のネズミを、街の至る所に散乱させたんだ。人々はその光景に驚きを隠せず、一瞬にして話題となった。それがブレック・ル・ラットの始まりだ !
アーティストについて
U : お気に入りのアーティストは誰ですか?
B : UK の Francis bacon (フランシス・ベーコン)
U : 最も影響を受けたアーティストは誰ですか?
B : UK の David Hockney (デイビット・ホックニー) イギリスのアーティストは、本当に素晴らしい人たちばかりだ。
U : ロンドンで仲良しなアーティストはいますか?
B : グラフィティ・アーティストの Alo Fish (アロ・フィッシュ)
U : 現在注目しているアーティストはいますか?
B : NY のグラフィティ・アーティスト Swoon (スウーン) 。彼女は奇才だ。2年前にブエノスアイレスで出会った。グラフィティの映画を作っていた連中に招待されて行ったんだけど、あんなにアグレッシヴな女性を見たのは初めてだったよ。
B : 1987年に劇的な出来事があった。それは、80年代のポップアート・シーンを盛り上げ、世界を驚嘆させたアーティスト Keith Haring (キース・ハリング) と 故 Jean Michel Basquiat (ジャン・ミシェル・バスキア) との出会い。パリ市内のナイト・クラブで友達に紹介され、その後食事に行ったんだ。キースはとても明るく元気な人で、沢山の話をした。ストリートアートやギャラリーのこと、情報交換もしたりして...グラフィティを始めたばかりだったから、凄く刺激的だった。ちなみに彼はゲイでね、その時は黒人のラブリーな男の子達を数人侍らせていたよ (笑)。 その反面、バスキアは、パラノイア (偏執症・妄想症) になっていて、 一言も口を聞かず、目も合わなかった。彼はテーブルの一番端に座って、うつむいていたんだ。今思えば、話しかければ良かったかな。
写真上 : キース・ハリング / 下 : ジャン・ミシェル・バスキア
描く・見つかる・逃げる・捕まる
U : 先日ロンドンの街でブレックさんのステンシルを発見しました。あのステンシルの制作方法を教えてください。
B : アイディア、メッセージ、意味あるものを起用して描き、地道にカットした後、ペーパーにスプレーする。そしてストリートに出て、ペイスティング (糊付け) の繰り返しさ。若いときは、真夜中のストリートで、直接壁にスプレーしていたんだ。警察に見つかっては逃げて、結局100回以上も捕まったけどね。しかし今は、歳をとってしまって早く走れないから、ペイスティングに変えたんだ。貼ってる最中に見つかったら、「すみません」 って言って、剥がせばいいんだよ (笑) 。
写真 : Great Eastern Street EC2
意を込めたメッセージ
B : このステンシルは、2005年にイラクで誘拐されたフランス人ジャーナリスト Florence Aubenas (フローランス・オベナ) の等身大なんだ。当時、私は1000枚以上のステンシルを、パリの街中にペイスティングした。彼女の姿を人々の脳裏に焼きつかせ、彼女が見つかるまで決して忘れないように...そしてついに開放されるときがやってきたんだ。私はアートが政治的、そして社会的な活動に役立つと信じている。
B : アート・ビジネスが、ここ数年で NY からロンドンに移っている。パリやベルリンにも、それが広まりつつある。だからこそ、今回のエキシビジョンをここに選んだんだ。今後もロンドンを中心に、ヨーロッパの至る所でエキシビジョンを開催していこうと思っている。それから、グラフィティを続けていくことは、私にとって一番重要なこと。ストリートに足跡を残すことは、私が存在している証拠だからね。